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1. ZigBeeとは

ZigBeeとは、低消費電力を特徴とする無線通信規格のことで、国際的な非営利団体「ZigBee® Alliance」によって策定され現在世界250以上の企業によって開発されています。 日本にも、国内普及を目的とした有限責任中間法人「ZigBee SIG ジャパン」があります。通信距離は数m~数100mで、狭いエリア内で使用する無線ネットワークWPAN(Wireless Personal Area Network)のひとつになります。また、基礎部分の仕様(物理層/MAC層)については、IEEE 802.15.4として規格化されています。

想定市場は、ビルオートメーション、家庭用電化製品、健康機器、産業用制御、ホームコントロールなど多岐にわたり、とりわけ近年ではスマートグリッドを担う要素技術としてスマートメーターへの応用が注目されています。

●センサーネットワークの基盤技術として

センサーネットワークという言葉を聞かれたことがあるかと思います。センサーネットワークとは温度や湿度などのセンサーを備えた小型・省電力の無線機器を周囲の環境に多数設置し、検知したデータを無線で収集、管理する仕組みのことです。センサー機器同士が互いに無線でネットワークを形成する仕組みを備えているため、ビルメンテナンス、工場での機器動作管理、メーター検針、家電制御、気象データ収集など、さまざまな分野での応用が考えられており、ユビキタス時代の実用的アプリケーションとして最も注目されています。ZigBeeはこのセンサーネットワークの通信プロトコルとして現在普及がすすめられています。例えば、家電機器制御としてテレビ、ビデオ、DVDのリモコンなど、民生機器への搭載、ビル・オートメーション分野でセキュリティ・空調制御・照明制御・自動検針、FA分野ではプロセス制御、ホーム・オートメーション分野では、ホームセキュリティ・空調制御・照明制御・アクセス制御、そして、パーソナル・ヘルスケア分野にもその活用が期待され、大規模なネットワークへとビジョンが広がっています。

2. 通信プロトコル

●はじめに

ZigBee通信規格は2004年の発表から現在に至るまでに、仕様上の大きな改訂が何度かありました。とりわけ2007年頃策定された最新規格においてはZigBeePROフューチャーセット(通称「ZigBeePRO」)が登場し、それまでのいわゆる伝統的なZigBee規格は「ZigBeeフューチャーセット」という呼び名で区別されることになりました。

【規格の変遷・機能比較】

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ZigBeePROとZigBeeの違いを一言でいいますと、ZigBeePROではツリー型ネットワークが廃止され、メッシュネットワークのみになりました。また初期のZigBeeではスター型においてスーパーフレームを利用するいわゆるビーコンネットワークが可能でしたが、ZigBeePROではビーコンネットワークはサポートされなくなっています。したがってZigBeePROではもはやスター型とメッシュ型の区別もあまり意味がなくなり、スター型とは「コーディネータとエンドデバイスだけで構成されるメッシュネットワークである」と考えることもできます。

このような変遷を辿ったZigBeeですが、現在の主流はZigBeePRO規格となっており、ZigBee解説書の中にはZigBeePROで通用しない機構が解説されているものもありますので、場合によっては注意が必要です。

このWikiでは主にZigBeePROを解説しますが、ほとんどの記述がZigBeeにも当てはまります。ただし特に区別が重要な箇所については、その区別を明確にして解説しています。

●周波数

ZigBeeは物理層として主にIEEE 802.15.4という規格を利用します。IEEE 802.15.4はその名の通りIEEEで策定されている通信規格で、ネットワーク層以上を定めるZigBeeと物理層を定める802.15.4は策定している団体が異なります。802.15.4で利用できる周波数は以下のようになっています。

また各周波数には分かりやすいように連番で論理番号が割り振られています。

したがってZigBeeの説明で「チャンネル11」というときは、2405MHzを指すことになります。これらの中で特に2.4GHz帯は世界共通で利用できるため、最も多く利用されている周波数になります。

そこで2.4GHzにフォーカスした場合の周波数の使い方と、家庭やオフィスで一般的に使われるようになった無線LAN(802.11b)との比較を下図に示します。

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802.15.4は隣合うチャンネル同士で影響を与えない点がポイントです。一方で802.11bはチャンネルの占有帯域が重複しており、完全に干渉を避けるにはチャンネルを4つ開ける必要があります。802.11bとZigBee(802.15.4)は共に変調方式にDSSSを使っていますが、802.15.4は中心周波数から2MHzを使い、802.11bは22MHzを使います。

また現在、950MHz帯を利用する802.15.4dの標準化も進行しており、そう遠くない将来に802.15.4d上で動作するZigBeeが利用可能になると考えられています。

●デバイスのタイプ

ZigBeeでは3種類のデバイスタイプが存在します。それぞれ、コーディネータ、ルータ、エンドデバイスと呼ばれます。

コーディネータは、PANを開始し、必要ならば外部のネットワークともつながるゲートウェイとなります。エンドデバイスはスリープしても良い唯一のタイプで、実際の用途、例えば温度計測するなら温度センサー、二酸化炭素濃度を計測するならCO2センサー役になります。この二種類のデバイス間に多数存在できてデータを転送する役がルータになります(もちろんルータにセンサーを付けても良いですが)。エンドデバイスと異なりルータはデータを中継するいわゆるルーティング能力を持ちます。いつどこからデータの中継を依頼されるか分からないため、スリープすることはできません。

●ネットワークの形

ZigBeeには図のように3つのネットワーク方式があります。

【ネットワーク構成図】

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スター型は、例えば無線LANがこの形です。中央にアクセスポイント(=コーディネータ)があり、そこに末端端末(=エンドデバイス)も転送端末(=ルータ)も直接つながります。

ツリー型はその名のとおり木のように、幹、枝、葉というように階層的につながっていく形式です。ZigBeeではツリーを形成する際に「分散アドレス割り当て」というユニークな手法を採用しています。この方式では、ある特定の計算式にしたがって親が子のアドレスをアサインしていきます。その計算式はツリーの深さと子デバイスの数から重複なくアドレスを生成でき、ネットワーク全体の情報を持つことなく一意なアドレスを割り当てていくことができるようになっています。さらに秀逸なのは、そのアドレスからツリーの深さや親デバイスを逆算できるため、ルーティングテーブルを使わなくてもネクストホップが確定できます。そのためネットワーク規模が大きくなってもメモリ消費量はそれほど増えないという大きな特徴をもっています。

(余談ですが個人的にはこの「分散アドレス割り当て」方式こそがZigBee最大の発明の一つだと思うのですが、なぜかZigBeePROでは廃止になってしまいました。)

最後にメッシュ型ですが、これはネットワークがメッシュつまり網状に拡大していく形です。アドレスは基本的に「乱数」で割り当てられます。よってアドレスからは転送先が分からないため、いわゆるAODVと呼ばれる動的な経路構築のメカニズムを用いて通信経路を形成します。前述のように、ZigBeePROではツリー型は廃止されており、ZigBeeフューチャーセットの方で継続的にサポートされています。またビーコンネットワークをサポートしないZigBeePROではスター型とメッシュ型の区別も曖昧で、結果としてスター・ツリー・メッシュという3つのネットワークの区別は、現在ではかなり便宜的なものになっています。

●ZigBeeの基本動作

ZigBeeネットワークの作り方を解説します。ZigBeeでは、各ネットワークはPAN IDという16ビットの識別子で区別されます。PAN IDが異なるデバイスはたとえ電波の届く範囲にいても直接通信はできません。逆にいうと、ZigBeeがネットワークを作るとは、各デバイスが同じPAN IDを共有するプロセスであるということが出来ます。

●コーディネータ

コーディネータはまず最初に各チャンネルの電波環境を調べ、ノイズの少ないチャンネルを検索します。同時にアクティブスキャンを行い、周囲に同様なコーディネータが存在しないか確認します。その上で、

・PANが利用するチャンネル

コーディネータは1つのPANに必ず1つだけ存在します。

●ルータ・エンドデバイス

まずはじめのプロセスとしてスキャンが始まります。多くの場合、各デバイスはアクティブスキャンを周期的に行いますが、その過程で周囲の端末に対して “Beacon Request”を同報します。それをキャッチした周囲の端末は “Beacon Response”で応答します。これにより周囲の端末の情報(Node Descriptor)を得ることができるわけです。

【スキャン】

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次に、スキャンによって取得した周囲の情報の中から、接続したいネットワークのPAN IDを選択します。更に接続したいMAC層のAssociation request, Response, Data requestを行います。つまり、ネットワークを作りたい端末に向かって、接続したいというサインを出すということです。この過程で接続先は発信してきた端末のアドレスを自分がもっているリストに追加します。

【接続】

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これでネットワークが完成されました。このしくみをもとに、自己構築、自己修復が可能で、転送しながら(マルチホップ機能)ネットワークをつなぎ、拡げていく、これがZigBeeのコア技術といえます。

3. 規格の推移・最新規格

●ZigBee規格の変遷

ZigBeeのコア技術について説明してまいりましたが、今までに2つの規格を経て2007年に最新規格が発表されました。ここではZigBeeの特長を更に解説します。

【規格の変遷・機能比較】

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 ○高度な「ネットワーク参加機能」

ZigBeeネットワークでは、まずネットワークを制御する親機に当たる「コーディネーター」がネットワークを開始し、そこにルーターやエンドデバイスが次々と参加し、1つのネットワークを形成します。高性能な「ネットワーク参加機能」により、収容台数が限界に達している親デバイスを正しく判断できるようになり、大規模なネットワーク構築が行いやすくなっています。

 ○選択可能な「同報機能」

特定の端末に選択的に同報でき、「電池駆動の端末は除く」とか、「1階に配置された端末グループのみ命令送信する」といった便利な使い方ができます。

 ○「永続データ」のサポート

停電や、事故、落雷での瞬時の電源切れなどにより端末内部データも消滅してしまっても、永続データのサポートにより、再び電源が投入されれば直前と同じ状態にすぐに復帰可能となり、ネットワークを構築し直す必要がありません。

●ZigBeeの特長をはっきりさせた最新規格ZigBeePRO

さらに最新規格ZigBee2007には二つのフィーチャーセットがあります。 その機能を比較してみましょう。 「ZigBee PRO フィーチャーセット」は、下記にまとめてある電子証明書のような画像配信を可能にした「分割配信機能」や、2.4GHzの同じZigBeeの周波数帯で干渉し合うような場合に、干渉検知を行ない、自動的に空いている帯域に移行させる「周波数アジリティ機能」など、ZigBee規格の中でセキュリティや信頼性に富んだネットワークを実現するものになり、ますますその社会的な重要度の高い通信インフラを支える期待が高まっています。

【2007規格の2つのセットを比較】

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特に、近年のエネルギー需要問題を解決すべく、昨年7月に米カリフォルニア州で検証実験が始まったスマートエネルギー(消費電力節電のための集中管理システム)においては、センサーシステムの核として「ZigBeePRO」を使うことが必須条件になっています。

【「ZigBee PRO」の主な機能】

1) 周波数アジリティー機能(Frequency Agility)    ZigBeeの周波数帯(2.4GHz)は、無線LANやブルートゥース(Bluetooth)などが共用しており、電波が干渉する可能性があります。「ZigBee PRO」では、通信状況を常に把握しており、干渉によって通信状況が悪くなった場合は、コーディネーターがチャンネル変更の指示を出し、干渉しないチャンネルへ移動させて、ネットワークの安定性を高めることができるようになりました。

2) 分割配信機能(Fragmentation)

ZigBeeは1回に最大127バイトのデータが送信可能ですが、用途(画像送信等)によっては127バイトでは小さすぎる場合もあり、「ZigBee PRO」では、127バイトより大きなデータを自動的に分割して送信し、受信側で元データに自動的に復元します。この機能により、電子証明書を送付することができ、高度なネットワークセキュリティが可能となりました。

3) ストキャスティック・アドレッシング機能(Stochastic Addressing) これまでのZigBeeでは親機のアドレスから自機のアドレスが決まっていたので、一度接続が完了すると場所を移動させることができませんでした。「ZigBeePRO」のストキャスティック・アドレッシング機能によりアドレスが乱数になったのでデバイスの親子関係を意識する必要がなくなり、たとえば、ディスプレイを移動するなど、構成するデバイスの位置移動が楽になりました。   

4) ID コンフリクト機能(ID Conflict)

ZigBeePROフューチャーセットでは、1つのネットワーク内で16ビット=65565通りのアドレスをランダムに割り当てますが、万が一そのアドレスが重なってしまった場合、衝突を検出してアドレスを自ら変更することで、衝突を解決する機能が備わりました。  

5) ルート・レコード機能(Source Routing)

ZigBeeでは、自動的にルートを選択してデータを中継しますが、どのルートを辿ったかということがこれまで分かりませんでした。「ZigBee PRO」のルート・レコード機能によって、途中ルートが分かるようになります。 

6) メニー・トゥー・ワン機能(Many-to-one)

ZigBeeでは、これまで1台ずつ経路を作る必要があったために、端末台数が多いと通信負担が大きく、たとえば、コーディネーター(Coordinator)を中心に6台がつながっている場合は6回の通信確認が必要でした。「ZigBeePRO」のメニー・トゥー・ワン機能は、1回の通信で全端末分の経路が作られるようになりました。

7) リンク・ステータス機能(Link Status)

Z一般にワイヤレス通信では往路はOKだが、復路はNGというように、片方向だけ電波状態が悪い場合が多くあります。「ZigBee PRO」のリンク・ステータス機能によって、往復路でそれぞれ電波状態の良い経路を選べるようになりました。

4. 他の無線規格との比較

●無線LAN、ブルートゥース、そして、ZigBee、ZigBeeは多数のデバイス制御に向いている

繰り返しになりますが、ZigBeeは、無線LANやブルートゥースなどと同じ2.4ギガヘルツ(GHz)の周波数帯を使う無線通信規格のひとつです。半径数十メートルの範囲で最大伝送速度が毎秒250キロビットの無線通信を実現します。同じ低消費電力を特徴とする短距離無線通信規格としては、ブルートゥースが先行して知られていましたが、ブルートゥースで課題解決できない場合の規格として、ZigBeeが生まれたといってもいいでしょう。それは、ブル―トゥースではバッテリーがもたない場合もZigBeeならば維持できるとか、ブルートゥースでは接続できるデバイス(接続可能ノード数)が7つですが、ZigBeeならば65535台まで可能でセンサー制御やビルの空調管理等、多数のデバイスとやりとりが出来る点などがあげられます。

(もちろん、ブルートゥースもZigBeeと違った利点があり、ワイヤレスヘッドセットに向いていて、技術開発も伝送容量の拡大といった方向に向かって開発が進められています。)

下記に、同じ2.4GHzの帯域を使う無線通信規格の比較をまとめてあります。

【ZigBeeと他の規格】

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上記のとおり、ZigBeeは小容量のデータしか扱えない代わりに、中継機能を持ち、エンドデバイス(端末)においては平均消費電力を低く抑えることができます。


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